2010年10月7日木曜日

ラファエラ・カラスコ「150グラモス・デ・ペンサミエント」

客席に入ると台所風景のビデオが上映中。
奥にはギターやチェロが吊るされている。

ん?
てな気持ちで席につき、開演すると
ビデオがうつしだされていたスクリーンは実は白いテーブルで
コック姿のダビ・コリアがテーブルにボールをおきつつ踊る。
一直線に並んだ白い机
ラジオとおぼしき音楽が遠くにきこえる


150 グラムの考えは、料理にたとえた作品。
アントニオ・カンポスがシェフ、ダビ・コリアをアシスタントに
チェロのホセ・ルイス・ロペス、ギターのカーノとヘスース・トーレスという道具をつかい
ラファエラ・カラスコをどう料理するか、という趣向。


歌い手のアントニオ・カンポスがギターを弾き
ラファエラがマラゲーニャを歌いながら登場
黒いタンクトップに黒いズボン、赤いブーツ

アントニオの弾き語りするファルーカを踊るラファエラ

やがてフレコ、房のベストをまとったラファエラは
チェロのファルーカを踊る。
音楽は通常の、クラシックなファルーカではなく
どこかちょっとピアソラ風
でも彼女のパソは伝統的なファルーカをふまえつつも
彼女ならではのファルーカに仕上がっている。
つまり伝統的なファルーカを分析分解再構成しているのだ

女性がファルーカを踊ると男性振りをそのまま、
男っぽく踊るのが普通だが、
ラファエラのファルーカは、女性のファルーカだった。
おみごと!
こんなファルーカみたことない。

今年はイスラエル・ガルバン振付けのルベン・オルモのバグパイプ伴奏のにはじまって
ハビエル・バロンのバイオリンとトレスの伴奏のもの、
そしてこのチェロ伴奏の、とファルーカが大豊作!

 ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco


ローレ・イ・マヌエルのヒット曲「トド・エス・デ・コロール」
ゆっくりしたブレリアをアントニオが歌い
(レシピと書かれたアンチョコをみながらなのはご愛嬌)
ラファエラがダビとパレハで踊る。
とてもとても官能的で美しい振付けだ。
みつめあうそのまなざしの濃厚さ。
直接的ではないだけに、よりエロティック。
緑のテーブルクロス?をカパ(マント)もしくはマントンのようにつかう。

そのクロスが巻きスカートとなり
カーノが立ってつまびく、フォークロック調の曲で踊るラファエラ。

その姿かたち、ポーズの美しさ。
ひとつひとつが絵のようだ


©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

コック帽のダビが机を叩く音でみごとなサパテアードをきかせ
無伴奏で歌うタンギージョを軽快に踊る
スペイン国立バレエ団出身で、バイラリンとしてとらえられがちな彼だが
フラメンコも素晴らしい。
ワイヤレスマイクの電池をおとすハプニングもあったが
最後まできっちり踊り通した。

ラファエラは黒いパンツスーツの上に白いバタ・デ・コーラをまといカンティーニャス
歌はミラブラス、カンティーニャス、アレグリアスとまわる。
バタ・デ・コーラさばきはいつもながらに素晴らしく
ムイ・フラメンカだが、スカートの前の部分が短くなっていて
黒いパンツと赤いブーツがみえるのはいただけない。
彼女には彼女の考えがあってのことだとは思うのだが…
とてつもなく繊細なシレンシオ。
ゆっくりと動くバタ、腕の動きの女性らしいつややかさ。
少しかがみがちなのはなぜだろう。
古典的な振付けも現代的な美しさに再現されている
最後はゆっくりとしたブレリアで終わる

チェロとカーノのルンバでまたもやアンチョコみながら歌うアントニオ
その間にバタを脱ぎ捨て
ヘスース・トーレスの美しいギターソロで
薄いガウンをまといコンテンポラリー風の振付け

最後は白い、羽のようなひらひらのついたベストをまとって
パルマ伴奏のアバンドラオ
黄色い照明の美しさ
そして彼女の回転のすばらしさ


衣装のことなど不満もあるが
コンパクトで、新鮮な、佳作といっていいだろう。

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