2010年10月10日日曜日

パコ・デ・ルシア 閉幕公演

そして神が舞い降りた。


 ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

第16回ビエナル・デ・フラメンコの閉幕を飾ったんは
パコ・デ・ルシアのコンサート

ミネーラからシルヤブのモチーフを経てファンダンゴへ
アルバム「コシータス・ブエナス」のソレア・ポル・ブレリア
アレグリアス
愛のうた、からボラールへ
躍り出たファルーがすごかった。
7月のときよりもずっとずっとよくて
すごみのようなものまで感じさせる出来。
滅多に拍手をしない記者たちもそろって拍手。

15分間の休憩をはさんで
タンギージョのリズムからタンゴ「パレンケ」
シギリージャ「カンパナス・デル・アルバ」
へとつながるポプリ

ファルーのシギリージャからタンゴ、ブレリアへとつなぐ
バイレも最高!
祖父ファルーコを思わせる瞬間もあった

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

おなじみ「シルヤブ」でフィナーレを迎え
アンコール

そしてお楽しみはそのあとにも。
コルドバに続きファルーコの弟カルペータが登場
マイク無しの伴奏、伴唱で
ブレリアを
そこに兄も加わって…
©Luis Castilla/Bienal de Flamenco


25日間30公演以上みてきたわけだけど
このフィン・デ・フィエスタは
その中でも最高の瞬間のひとつだった。

フラメンコはこうして受け継がれていくのだ
ビエナルは幕を閉じても
フラメンコは終わることのない
永遠のアルテなのだ

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco
©Luis Castilla/Bienal de Flamenco


2010年10月9日土曜日

ラ・モネータ「バイラール、ビビール。スイテ・フラメンカ・パラ・バイラオラ・イ・コンパニア」

現代音楽をバックに
黒い空間を行ったり来たりする3人の男とモネータ
コンテンポラリー風にフラメンコ風味

意外なオープニングではじまった
ラ・モネータ公演
これまで一人で踊り続けて来た彼女が初めて、3人の男性舞踊手を起用し
舞踊団構成での公演

続くサパテアードは舞台の中央にいるギタリストのまわりを
踊る、これまたコンテンポラリー風味。
ギターと踊りの対話が全く感じられないのが残念。
続く男性陣のマルティネーテも同様。

赤いサテンの夜会服のような衣装でカスタネットをならし
パレハで踊るペテネーラ
男性のリズムでのソロもみるべきところはない。

黒地に白い、細かい水玉の衣装にエプロンという伝統的な衣装で登場したタラント。
これは、と期待したのだが固い。
マヌエラ・カラスコやフアナ・アマジャの影響を感じる

ディエゴ・アマドールのピアノでのティエント
弾き語りのサンブラは男3人をしたがえて彪柄のバタ・デ・コーラに白いマントン

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

ファンダンゴ
そしてソレア
踊りが始まる前にめちゃくちゃゆっくりなカンテがふたつ
待ちくたびれた登場したモネータだったが
これはまる。
集中力で、マヌエラ・カラスコとまではいかないものの、
じっくりとみせてくれる。
テンペラメント!
だがブレリアでは男性陣が加わりそれまでのテンションが変わってしまうのは残念。


いろいろ考えて、しっかり練習してつくっているのはわかるが
だからいいとは限らない。
無理にカンパニーにするよりも舞踊のリサイタル、
というかたちで見せる方がいいこともある。

カンタオールたち、ガジとミゲル・ラビ、ギターのイグレシアス兄弟も好演

2010年10月8日金曜日

ラファエル・カンパージョ「アル・コンパス・デル・ソレール」

ついに本物のフラメンコを観た!
などといってはほかのフラメンコたちに失礼だが
そう言いたくなるほど、ラファエル・カンパージョは
フラメンコのエッセンスにあふれたものだった。
粋で、きっぷがよくて、男らしくて、精悍で、
躍動感があって、華やかでかつ渋く、
いやいや、本当に素晴らしいものだった。

ラファエルがイスラエル・ガルバン、ハビエル・バロンとともに
マノロ・ソレールの作品「ポル・アキ・テ・キエロ・ベール」に出演したのは
1996年のビエナルだった。
あれから14年。
2003年に亡くなったソレールへのオマージュとしてのこの作品、
ラファエルのソレールへの思いにあふれたもので
ソレールを知る者たちにとっては涙なしには観られなかったにちがいない。

幕があくとビデオ
在りし日のソレールがソレアを踊る
フラメンコの粋を極めた、男っぽく、リズムにあふれるその踊り。

ラファエルのサパテアード
そしてカホンを叩く
そのカホンの叩き方、肩を下げ、下をむいて叩くその叩き方がソレールそのもの。
カホンに座ったラファエルはそのままサパテアードをはじめる
やがてカホン(ホセ・カラスコ)とパーカッションの伴奏がはじまる。

早いテンポではじまったシギリージャがやがて通常のテンポとなっていく。
ラファエルの、姿のよさ、そのかたちの美しさは特筆すべきものだ。
回転のときの身体の使い方も絶品。
切れがよく、ひたすら男らしい。
サパテアードも見事だが、上体の動きも決しておろそかにしない。

フアン・ホセ・アマドールが歌い上げるマルティネーテを
歌と会話するがごとく踊っていく。

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

最後は丸い光の中に、ラファエルが、フアン・ホセが、ボボーテが、
ソレールその人と同じ姿勢で腕を前に、コンパスを刻み始める。
涙が止まらなかったのは私だけではあるまい。

ソレールが長らく共演した、パコ・デ・ルシアのファルセータではじまるアレグリアスは
ウエルバの踊り手チョロ。
ラファエル風なのだが、回転ひとつとっても身体の使い方が今ひとつで残念。
また、後ろをみて踊りすぎるのもどうだろう

パーカッションではじまるファルーカ

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

ラファエルは腰高のズボンにベストという、伝統的な衣装で
伝統的な振付けで踊る。
この人のまなざしの色気といったらどうだろう。
肩越しのまなざしのつややかさ。

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

フアン・ホセの、映画音楽風のギターにのせたティエント
カホンやパーカッションのソロ
名曲「レジェンダ・デル・ティエンポ」のイントロではじまるブレリア
そしてロマンセ風のソレア・ポル・ブレリア。
ベストを途中でぬぎ、白いシャツに黒いズボンという、
これまたある意味、伝統的なフラメンコ衣装で踊るラファエル。
何をしても格好いい。

最後は音を消したソレールのビデオにあわせて踊るラファエル
歌うフアン・ホセ。
二人の目にも涙がうかぶ。

マヌエルの魂はラファエルのバイレの中に息づいている

でもしかしほんとうに
マヌエル、あなたに会いたいよ


21時ロペ・デ・ベガ劇場ではエスペランサ・フェルナンデス公演

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

2010年10月7日木曜日

ラファエラ・カラスコ「150グラモス・デ・ペンサミエント」

客席に入ると台所風景のビデオが上映中。
奥にはギターやチェロが吊るされている。

ん?
てな気持ちで席につき、開演すると
ビデオがうつしだされていたスクリーンは実は白いテーブルで
コック姿のダビ・コリアがテーブルにボールをおきつつ踊る。
一直線に並んだ白い机
ラジオとおぼしき音楽が遠くにきこえる


150 グラムの考えは、料理にたとえた作品。
アントニオ・カンポスがシェフ、ダビ・コリアをアシスタントに
チェロのホセ・ルイス・ロペス、ギターのカーノとヘスース・トーレスという道具をつかい
ラファエラ・カラスコをどう料理するか、という趣向。


歌い手のアントニオ・カンポスがギターを弾き
ラファエラがマラゲーニャを歌いながら登場
黒いタンクトップに黒いズボン、赤いブーツ

アントニオの弾き語りするファルーカを踊るラファエラ

やがてフレコ、房のベストをまとったラファエラは
チェロのファルーカを踊る。
音楽は通常の、クラシックなファルーカではなく
どこかちょっとピアソラ風
でも彼女のパソは伝統的なファルーカをふまえつつも
彼女ならではのファルーカに仕上がっている。
つまり伝統的なファルーカを分析分解再構成しているのだ

女性がファルーカを踊ると男性振りをそのまま、
男っぽく踊るのが普通だが、
ラファエラのファルーカは、女性のファルーカだった。
おみごと!
こんなファルーカみたことない。

今年はイスラエル・ガルバン振付けのルベン・オルモのバグパイプ伴奏のにはじまって
ハビエル・バロンのバイオリンとトレスの伴奏のもの、
そしてこのチェロ伴奏の、とファルーカが大豊作!

 ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco


ローレ・イ・マヌエルのヒット曲「トド・エス・デ・コロール」
ゆっくりしたブレリアをアントニオが歌い
(レシピと書かれたアンチョコをみながらなのはご愛嬌)
ラファエラがダビとパレハで踊る。
とてもとても官能的で美しい振付けだ。
みつめあうそのまなざしの濃厚さ。
直接的ではないだけに、よりエロティック。
緑のテーブルクロス?をカパ(マント)もしくはマントンのようにつかう。

そのクロスが巻きスカートとなり
カーノが立ってつまびく、フォークロック調の曲で踊るラファエラ。

その姿かたち、ポーズの美しさ。
ひとつひとつが絵のようだ


©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

コック帽のダビが机を叩く音でみごとなサパテアードをきかせ
無伴奏で歌うタンギージョを軽快に踊る
スペイン国立バレエ団出身で、バイラリンとしてとらえられがちな彼だが
フラメンコも素晴らしい。
ワイヤレスマイクの電池をおとすハプニングもあったが
最後まできっちり踊り通した。

ラファエラは黒いパンツスーツの上に白いバタ・デ・コーラをまといカンティーニャス
歌はミラブラス、カンティーニャス、アレグリアスとまわる。
バタ・デ・コーラさばきはいつもながらに素晴らしく
ムイ・フラメンカだが、スカートの前の部分が短くなっていて
黒いパンツと赤いブーツがみえるのはいただけない。
彼女には彼女の考えがあってのことだとは思うのだが…
とてつもなく繊細なシレンシオ。
ゆっくりと動くバタ、腕の動きの女性らしいつややかさ。
少しかがみがちなのはなぜだろう。
古典的な振付けも現代的な美しさに再現されている
最後はゆっくりとしたブレリアで終わる

チェロとカーノのルンバでまたもやアンチョコみながら歌うアントニオ
その間にバタを脱ぎ捨て
ヘスース・トーレスの美しいギターソロで
薄いガウンをまといコンテンポラリー風の振付け

最後は白い、羽のようなひらひらのついたベストをまとって
パルマ伴奏のアバンドラオ
黄色い照明の美しさ
そして彼女の回転のすばらしさ


衣装のことなど不満もあるが
コンパクトで、新鮮な、佳作といっていいだろう。

2010年10月6日水曜日

エバ・ジェルバブエナ「クアンド・ジョ・エラ」

幕があくと暗闇に白い布がうかぶ。

暗闇

うすらあかりにひざまずき後ろ手の3人の男たちが並ぶ
エバは風船をもち舞台奥を歩いて行く
銃声で倒れて行く2人。。。。そして3人目は?

思いがけない衝撃的なシーンではじまった
エバ・ジェルバブエナの新作「クアンド・ジョ・エラ」


市民戦争である日連れて行かれ二度と帰らなかった曾祖父の不在がずっと心の中にあったという彼女の思いを、生きなかった人生を生きてみる試みを、そのままかたちにした作品と語るエバの話をどこかで読んだが、全編を貫く寂しさ、暗さは彼女の狙いそのものだったかもしれない。だが、その暗さが、観ている私たちの中にもある暗い思いと呼応することは、少なくとも私の場合は、残念ながらなかった。

髪を振り乱し、ブトーのようなゆっくりと集中した動きをみせるエバ
上手にあるろくろをまわしつぼをつくるが、それを投げつけ足にまき
下手の粘土の入ったおけの中で踊るエバ
その彼女もろくろの上でゆっくり回っている

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

エバによれば時によってかたちがかわってくるろくろ作りは人生のようなものだから
ということのようだが、いわれなければわからないし、いわれてもよくわからない。
というか映画「ゴースト」を連想してしまった、、、



 クリスマスのような明かりがさがってきたフェリア、お祭りのシーン。
粘土のおけがのっていたろくろは回転木馬に早変わり。
フェルナンド・ヒメネスのチャップリン風フラメンコにバンビーノの「パジャソ」を歌う。
メルセデス・コルドバはペペ・デ・ラ・マトラーナが歌ったキューバ風のルンバで踊る。

お祭りの鏡の前にたつエバ。
そしてタンゴ。昔風に結った髪は祖母の影?
ブレリアではヘレスのおばあさんのような振りもみせた

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco
エバの踊りはたしかに見事だ。
ただ腕をすっとのばすだけ、そんなささいな仕草にどきどきする
それは腕をのばすという、動作をしているだけではなく
そこに心がこもっているから。
下から上への単なる移動ではなく、
その動きに意味があるから。

エバとエドゥアルドのかけあい(下の写真)は
息をのませるところもあった。
エドゥアルドの、回転のときの顔や腕の位置が美しい。

      ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco    

が、次のシーンは一人は足に、もう一人は腕に鈴をつけた上半身はだかの男二人による
闘鶏を模した踊り。
パーカッションのせいか南方の鳥のようにもみえるし、コンテンポラリーというか、民族舞踊風というか。。。フラメンコではないが、面白い。だが、ちょっと唐突に思える。でもきっとエバの中では意味のあることなのだろう。

続くカーニバルのシーンでは羊やヤギのかぶりものをかぶった人たちがファンダンゴを踊る。
その魔物たちを追い払うようにマントンを振り回すエバ
エバの動きの重さに圧倒される

 ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

赤い衣装を脱ぎ、マントンとともにろくろのそばにある鞄にしまうと
今度はベージュの衣装でセラーナを踊る

すごいフラメンコな瞬間もあるけど
まだこなれていないフラメンコ的ではない動きもあって
彼女に同化できない
©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

最後はろくろの上のかたちづくられつつあったものをこわして終わる。

壊されたのは私たちの期待だったかもしれない。

それを踊れば皆が納得間違い無しのソレアをあえて踊らなかったエバ

満員の観客の頭の中に多くのクエスチョンマークを残して去って行ったエバ

もやもやした感情が私の中に残っている

アルティスタの自由 観客とのずれ 伝えることの難しさ


2010年10月5日火曜日

ハビエル・バロン「バイベネス」

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

ハビエル・バロンは生まれ故郷の
セビージャ県アルカラ・デ・グアダイラへのオマージュというべき作品
「バイベネス」
アルカラ、モロンを行ったり来たり。

幕開きはブレリアのフィエスタ。
ハビエルはコーデュロイの上着だし
ギタリストたちは帽子をかぶっていたりと、
田舎町の街道のベンタ、
古くからある食堂/飲み屋での
フィエスタの雰囲気だ。

のっけにみせた、ブレリアのちょっとしたひと踊りのすごいこと。
一緒に踊るカルメリージャとの組み合わせも悪くない。
踊り手はほかにダビ・ペレス、アナ・モラーレス、チョロと
実力派をそろえ
ホセ・バレンシアも歌い踊る、
その楽しさ。

ソレアがはじまったかと思うと
ダビとチョロ、男二人のシギリージャスへ
そしてまたソレアへと戻る
ハビエルとアナのロンデーニャ
美しいパレハの振付けだ。
ラウル・ロドリゲスの弾くキューバの弦楽器トレスではじまるグアヒーラに
ラファエル・ロドリゲスのギターが重なり
チョロのサパテアードがそこに加わる。

再びハビエルがソレアのサパテアードをきかせる。

ハビエルは出演者それぞれにみどころを、
光のあたる場所をあたえ
そして自らも輝く。

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

バイオリン、ギターとトレスで18世紀?の曲、
パナデーロが演奏され
カスタネットを手にしたアナとダビがボレーラを踊る。
アナのきちんと訓練された形が気持ちよい。

ダビ・パロマールとカルメリージャの歌うアレグリアス
ラファエルのギターソロ
そしてハビエルのブレリア!
とんでもなく美しくフラメンコなブエルタをみせてくれた。

そしてアレシス・レフェブレのバイオリンと
ラウルのトレスでのファルーカ!

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

美しい音楽での最高のフラメンコ
ハビエルは明晰で正確なサパテアードもさることながら
腕の動きが美しい

一転してカルナバルのムルガとよばれるおふざけソング
パンが有名なアルカラにちなんで全員がパン屋さんの格好で
パンや麺棒を手に歌い踊るタンギージョ

ホセ・バレンシアのサエタ
ダビ・パロマールの語り

ディエゴ・デル・ガストールのブレリアのリズムでのフィン・デ・フィエスタ

かつてのハビエルの作品「ディーメ」にも似た
幸福感が劇場を包む

アンコールではホセ・カラスコのコンガにあわせて
ラファエル・ロドリゲスがルンバを歌い踊り

いやいや楽しかったです。

2010年10月4日月曜日

イサベル・バジョン「エン・ラ・オルマ・デ・スス・サパトス」

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

音のない真っ暗な舞台にうっすらとみえてくるバタ・デ・コーラ
そのうしろで、後ろ向きで
上体だけで踊るイサベル。

意外なオープニングではじまった
「エン・ラ・オルマ・デ・スス・サパトス」は
この一種不思議な雰囲気をもった振付けのフロレンシオ・カンポスをはじめ
続くグアヒーラはフェルナンド・ロメーロ、
ワンピースにハイヒールで自由に踊る「ハスミン・カルサブレ」は
ルベン・オルモ、と3人の振付家の曲を踊る前半と
彼女自身が振り付けた曲の後半にわかれる。

アバニコのグアヒーラも
軽やかな「ハスミン・カルサブレ」も
美しく心地よいがやはり圧巻は後半。

チャノ・ロバート、マリオ・マジャ、マティルデ・コラルの声が
ラジオのようにきこえてはじまり
まずはタンゴ。
トリアーナのタンゴを歌い踊る
その粋なこと。
ちょっとエロティックな振りさえも上品で
コケティッシュで
セビージャらしい愛らしさとワルな感じで
客席から何度もオレ!が飛んだ。
続くガロティンは帽子をかぶらず
でも帽子をもっているような振りが
これまためちゃくちゃ粋で素敵で
途中でリズムのアクセントが変わり
またガロティンに戻ってくる音楽も面白い。
スカーフで髪を覆い、平べったいカラニェ帽をかぶって踊るセラーナ
伝統的な要素をうまく今のフラメンコにいかしている
最後は白いバタ・デ・コーラでのアレグリアス。
優雅で華やかで女性らしく
まさにフラメンコの華!

イサベルのフラメンコに影響を与えた、
マティルデ・コラル、チャノ・ロバート、マリオ・マジャの声がきこえてくる
フラメンコはこうして世代をこえて伝わって行くのだ

極上のフラメンコをみせてくれたイサベルに乾杯!

2010年10月3日日曜日

マリア・パヘス、シディ・ラルビ・シェルカウイ「ドゥーナス」

マリア・パヘスとコンテンポラリーのシディ・ラルビ・シェルカウイ、
「ドゥーナス」砂丘はたとえようもなく美しい作品だった。

 ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

布の中から近づく二人
顔をだすと布は蝶の羽根にも似て
やわらかな腕の動きは会話のよう

 ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

布に包まれた二人
布で囲まれた空間
ピアノとバイオリンの美しい曲に
やがてギターが加わりタラントへ

同じ動きをしていても
ニュアンスがまったくちがう二人
それは東と西 東洋と西洋の違いのようでも
男と女の違いのようでもあり
思想や宗教の違いのようでもあり
それでもそこにあり
かかわり合い
時に争い、時によりそい、重なり合う


  ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

シディが砂に指で描く絵がスクリーンにうつしだされる
マリアが腕をのばすとそれが木の枝になる

マリアが舞台を去っても
絵を描き続ける。
アダムとイブ?
生まれて育ってそして?
9月11日?
たくさんのクエスチョンマーク

二重の影とシギリージャスを踊るマリア
  ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

インド風の音楽
アラブの歌声
そしてフラメンコ

布と光と影の魔法

砂丘のようなベージュの世界が青にそまる
砂漠の夜?

シディがこどものように抱いていた布が
マリアに抱かれマントンのようにひるがえる

  ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

シディもサパテアードをふむが
それはフラメンコをまねするとか、
フラメンコを踊るとかではなく
まったくちがうものになっている
サパテアードがうまくいかないのではない
リズムも完璧だが
マリアが大地を踏むとすれば
彼は雲を踏んでいる、
空にうかんでいるかのようなのだ

アラブの歌とフラメンコが重なり合う

最後はひとつの布で腰までをつつんだ二人が
上体だけで踊る
ひとつになってもひとつではない

 ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

1975年ベルギー生まれ
モロッコ人の父とベルギー人の母をもつ、
今、最も注目されているコンテンポラリーの振付家の一人という、

シディの、美しすぎるその動きが
ふたつの文化を生きている彼ならではの創造力が
フラメンコにも新しい意味を、発見をあたえた



ロペ・デ・ベガ劇場ではマリナ・エレディアのリサイタル
 ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

ゲストにパリータ、ファルキート、ディエゴ・デ・モラオと豪華なかおぶれ

オテル・トリアーナではセグンド・ファルコン、ラロ・テハーダらの
「エンサジョ・イ・タブラオ」
マノロ・マリンが秀逸







2010年10月2日土曜日

フアン・カルロス・ロメーロ「エル・アグア・エンセンディーダ」

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco 

10月1日。ビエナルも後半。セントラル劇場では
ウエルバ出身のギタリスト、フアン・カルロス・ロメーロのリサイタル
新譜「エル・アグア・エンセンディーダ」の発表コンサートでもある。

しっとりとしたソロのソレアにはじまり、躍動感のあるブレリアにおわるまで
全てのコンサートを病に苦しんだ妻と子供にささげたフアン・カルロス。
エル・プルガやスーシの娘メルセデス・アマドールとカルメン・モリーナ、
双子のパルメーロ、ロス・メジらのコーラスやバイオリンなどもはいるものの
あくまでも主役はギターという正攻法のリサイタル
ティノ・ディ・ジェラルドのパーカッションが心地のよいリズムをきざみ
その上をすべるように流れるギターの音色。

会場に姿を見せた師マノロ・サンルーカルに捧げた曲に加わったアレシスのバイオリンが
パコ・トロンホへのファンダンゴ・デ・ウエルバをも歌う。
華やかなアレグリアス
カルメンが歌うナナの美しさ。

1時間ちょっとのコンサートだったが
ギターを愛する者には素晴らしい時間だったことだろう。

ロペ・デ・ベガ劇場ではアントニオ・エル・ピパ「プエルタス・アデントロ」
2007年マラガ・エン・フラメンコで初演された作品だ。
 ©Luis Castilla/Bienal de Flamenco 

オテル・トリアーナでは「ネグロ・コモ・ラ・エンドリナ」
ペドロ・ペーニャとイネス・バカンを中心に
トナ、カンティーニャ・デ・ピニーニ、ブレリアス・アル・ゴルペ、
ソレア、ロマンセ、シギリージャとながれるような見事な構成で
レブリーハならではの曲を堪能。
伝統的なフラメンコをきちんとみせたのは企画構成のテレ・ペーニャの功績だろう。
ディエゴ・マルガラの優雅な舞いと
コンチャ・バルガスの、歩くだけでもフラメンコな、熱さに
マリア・ペーニャも熱唱。

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco 

2010年10月1日金曜日

小松原舞踊団「HIBIKI」

今年1月、小松原庸子スペイン舞踊団40周年記念作品として初演された「HIBIKI西と東」が
マエストランサ劇場に登場
1988年の「私はフラメンコを選んだ」以来22年ぶりのビエナルは
日本のフラメンコを代表する舞踊家としてスペインでも著名な小松原を筆頭に
石井智子、南風野香、井上圭子、谷淑江、丹羽暁子、田尻希絵、田村陽子ら舞踊団に加え、
クリージョ、エル・フンコらスペイン人ゲストダンサー、
ピアノのドランテのグループ、
フアン・ホセ・アマドール、アントニオ・ゴンサレスらのフラメンコ陣と
林英哲と風雲の会による和太鼓の共演という、
まさに盛りだくさんな作品。

ドランテのピアノと和太鼓とがひとつの音楽になり、そこに踊りもからむ
第一部のオープニングも観客を驚かせたことだろうが、
みどころはなんといっても第二部。
客席からうちわのような太鼓を叩きながら現れる男たち
神秘的な、いにしえの日本のイメージの中

©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

マントンとバタ・デ・コーラをまとった小松原が舞台の中心にすっと立つ。
クリージョとのシギリージャス
太鼓のきざむリズム


©Luis Castilla/Bienal de Flamenco

フアン・ホセの歌うシギリージャス


続くドランテのグアヒーラ、
林とドランテのソロ
フンコのソロではじまるアレグリアス
太鼓のソロにクリージョがからむ「三絶」
タンゴス
そしてフィナーレ
太鼓の音で白いバタ・デ・コーラをひるがえし
マントンをまわせる踊り手たちは天女のようだった。


©Luis Castilla/Bienal de Flamenco